埼玉県健康管理士会 会員 大脇 久子

西公民館で古唱会の皆様に「くすりよもやま話」というテーマで講演しました。
振り返ると昨年は、大震災の翌日、古唱会の皆様にお話を聴いていただくことになっていました。震災で家にたどり着いたのは午前4時過ぎ。まんじりともせずに西民館へ行き講演したことを思い出し今回は特別の思いを込めて講演をスタートさせました。

今回はくすりの形に焦点を合わせました。くすりというと思い浮かぶのは小さい頃近所のお医者さんからいただいた乳針でごりごり混ぜた薬包紙で包まれたもの。今は錠剤やカプセルでしょうか。その錠剤にも丸いものが大半ですが他にも様々な形があります。三角形、四角形(菱形)、五角形、六角形、八角形、花形など。さて質問をさせていただきました。「何故こんな形なのでしょうか?」のどが痛いとき、うがい薬そしてトローチ。穴の開いたトローチ、これはなぜでしょうか?会場からもお答えがありましたが、のどを詰まらせることがないように空気の通り道を作ってあるのです。直径が1.5cmを超えるものはドーナツ状にすることと決められております。粉薬にも粉末状のものや顆粒状のものがあります。顆粒状のものは苦味を抑えたり加工されておりますが、入れ歯などに挟まることもあります。
健康管理士会 講演 くすりの体内への取り込みの経路図を示します。
口から飲んでいただく飲み薬の場合、お食事に即した指示が多いですが、「食前」「食後」は夫々食事の30分前、後に。他に「直前」「直後」の指示もあります。間違えやすいのが「食間」。食事をしている間ではありません。食後2時間ぐらい。胃が空の状態です。食べ物が薬に影響を及ぼす場合などに。食べたものの消化活動の様子を見てみると「2時間」の意味が分かっていただけるかもしれません。(講演ではお話しそびれてしまいましたが、日本で1日3食が定着したのは江戸時代頃からだそうです)飲み込みやすさを工夫した形があります。エバテールのカプセルで18×7mm、かなり大きいので仁丹のような粒状タイプが出来ました。余談ですがこのエバテールという薬の成分は脂肪酸の一つ、多価不飽和脂肪酸に分類されるEPA、魚特に青魚により多く含まれるものです。動脈硬化の抑制、血管をしなやかにといった目的で使われますが、薬を毎日飲む同じ量を食事のみで摂ろうとするとちょっとカロリーオーバーになります。

次に同じ中味ですが使い方の違うものを紹介します。ニトログリセリン・・心臓へ栄養や酸素を送る冠状動脈の血流がうまくいかない狭心症の発作が起こったときに使われる薬ですが、錠剤、スプレー、貼り薬があります。肝臓で薬が分解され効き目が失われるのを防ぐため、錠剤、スプレーは「舌の下」に。舌の下にはたくさんの血管があります。粘膜を通して吸収されていきます。

アダラート・・・ニフェジピンという血圧を下げたり狭心症の治療に使われる成分が10㎎含まれています。同じ量を含むのにカプセル剤は1日3回、錠剤は1日2回、もう一つの錠剤は1日1回服用されます。粉々にして、また2重構造にしてと作り方を変えることで薬がより長く効くようになりました。
パッケージの工夫もあります。その1・・女性の場合40~60代で女性ホルモン量が減少していきそれに伴って骨の量も減少していきます。骨粗鬆症の薬にはカルシウム剤、カルシウムの吸収を助けるビタミンD剤。骨の吸収を防ぐビスホスホネート剤。この薬は飲み方に制約あります。それを緩和するため7日分まとめて週に1回飲む方法があります。服薬日を忘れないように日付けを書けるパッケージも作られています。最近骨の形成を促進させる注射剤も発売されました。

その2・・胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの原因といわれるヘリコバクタ・ピロリ菌。
ヘリコ・・ヘリコプターからも推測つくかもしれませんがらせん状。バクタ・・バクテリア(細菌)ピロリ・・胃の出口pylorusで多く見つかります。この菌の見つかった人に2種類の抗生物質と胃酸を抑えその効果が落ちないようにする薬を1回に5粒、朝夕7日間飲んでいただきますが、大変ですのでパックになったものがあります。
お通じが・・・といった時。便をやわらかくして出やすくする薬。腸に刺激を与えて便を押し出す力を与える薬(錠剤、散剤、液剤など)。肛門から入れてガスを出して便を出やすくする薬(坐薬)などがあります。坐剤(座剤とも書きますが座はその場所を、坐はその動作を表し、主に坐という字が使われます)は決して座って飲む薬ではありません(笑い話のような実話があります)。
インフルエンザウイルスが体の中で増えていくのを抑える薬にも、飲み薬、吸入薬そして注射剤があります。
血液中の糖分を調整しているホルモン、インスリンは今は注射剤のみですが、それでもビンに入ったタイプ、カートリッジに入ったタイプ、使いきりのペン型やキッチンタイマーのような形があります。

日ごろ使っている薬の名前を覚えていますか?なんのために使っていますか?
あなたの名前は?
ガスターR錠・・これは商品名
ファモチジン・・・一般名
ファモチジンという薬が10mg入った「ガスター」という商標を登録しているということです。
(Rは登録商標の意味です)錠剤です。白い錠剤に会社のマークと番号がついています。(これで薬を識別します)
ムコスタ錠100mg・・・商品名
レバミピド・・・一般名
この薬はちゃんと錠剤に「ムコスタ」という名前が刻印されています。分かりやすいですね。
アテレック錠5mg・商品名「高血圧症の薬です」
シルニジピン・・一般名

アユリール錠1mg・・商品名 「糖尿病薬」
グリメピリド・・・一般名

これらの薬は使用目的が表のシールに明記されています。
同じ名前を持つものに・・
ガスター10/ ガスター錠10mg
ロキソニンS/ロキソニン錠60mg
薬局でご自身で購入できる一般用医薬品と医師からの処方箋をもって入手できる処方箋医薬品の違いはありますが、中味は全く同じ。
バッファリン配合錠330mg/バッファリン配合錠8mg/バッファリンA/バッファリンルナ。
前の2つが処方箋医薬品。でも中味は違います。
今回の震災でも活躍しましたがお薬をいつも使っている方はその情報を記入しておく「お薬手帳」は大事です。

そしてお薬を飲む時、お薬は薬包紙(包み方を・・)そして今はシートからちゃんと出して(シートごと飲んでしまった方もいるそうです)コップ1杯程度の水で。オブラートを使うことも。
花粉症の季節です。お薬を症状にあわせて正しく使っていただきたいと。くしゃみ、鼻水の症状に使われる抗ヒスタミン薬は眠くなったり、緑内障の方は注意。鼻づまりに即効の血管を収縮する薬は使いすぎるとかえって症状を重くします。
会場に来てくださった方々、健康管理士の方々、ありがとうございました。原稿チェックとプロジェクター、パソコンなど佐藤衣代さんにはこの場を借りて御礼申しあげます。