埼玉県健康管理士会 会員 小林 英二

「3月27日(火)に高齢者が最もなりたくない病気の一つである認知症に関する講演(90分の予定)を行った。
埼玉県健康管理士会 講演
1.認知症とはどういう病気か
かつては「痴呆」という名称であったが、侮蔑的な意味が含まれているということ
でH16年に「認知症」と名称が改められた。認知症という病気は、認知機能(記
憶力や判断力)が低下することにより、日常生活に支障をきたすようになる状態をい
う。初期の症状としては「もの忘れ」が現れることが多いが、加齢によるもの忘れは
一時的に思い出せない状態であり、認知症によるもの忘れは何かを体験したことが頭
に入っていないので思い出すことはない。

2.認知症の主な種類とその症状
認知症は高齢者に多く、85歳以上では4人に1人以上に及ぶ。主な種類は、
(1)アルツハイマー型認知症(全体の約5割)
原因は脳の神経細胞にβアミロイドというたんぱく質が蓄積して老人斑を形成し、脳
神経細胞が死滅し脳が萎縮することによって起こる。記憶障害が顕著に表れるのが
特徴である。
(2)脳血管型認知症(全体の約2割)
脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血、くも膜下出血)すること
で、脳の一部が障害されて起こる。特に高齢者では、脳の細い血管が多数詰まる
「無症候性脳梗塞」による場合が多い。
(3)レビー小体型認知症(全体の約2割)
日本のお医者さんが数年前に発見した認知症で、「幻視」が表れるのが特徴であ
る。
(4)前頭側頭型認知症((全体の約1割)
脳の前頭葉と側頭葉が徐々に萎縮していき、理性や感情がうまく働くなり様々な症
状が引き起こされる。
(5)特発性正常圧水頭症型認知症(全体の約1割)
何かの原因で脳室に脳脊髄液が増加して大きくなり、脳を圧迫することによって認
知症の症状が起こる。手術によって脳脊髄液を抜くと認知症の症状がなくなり改善
する。なお、認知症と間違えらやすい症状として「薬の副作用」「てんかん」など
による場合がある。

3.認知症予防5か条
(1)生活習慣病の予防と早期発見・治療
特に、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満などは、動脈硬化を起こし脳卒中のリスク
を高めるので、適度な運動とバランスの良い食生活を送ることにより予防をする。
また、早期発見・治療も大切。
(2)脳を元気にする食生活を送る
バランスの良い食事が基本で、特に脳を守る食生活を送ろう。そのポイントは①総
エネルギー量を抑える②野菜を十分に摂る③肉と同じに魚を摂る④甘いものを摂り
過ぎない⑤水分を十分に摂る、逆に脳に悪影響を及ぼす深酒とタバコはやめる。
(3)適度な運動を行う
適度な運動(有酸素運動)は動脈硬化を引き起こす生活習慣病の予防に効果があ
る。脳への直接的効用としては、適度な運動を行うと脳の血液の循環が良くなり脳
が活性化される。また、運動を行うと脳神経栄養因子が増え、新たな脳細胞が作ら
れる。さらに、下半身の筋肉トレーニングは膝などの関節を守るので、引きこもり
を防ぐことで間接的に認知症の予防効果が期待される。
(4)趣味を持って充実した日々を過ごす
知的、芸術的などの趣味を持つことで生きがいを得るとともに脳が活性化される。
(5)社会と関り人との交流を持ち、明るく楽しく過ごす
ボランティアなどで社会と関ったり趣味などを通して人との交流をもつことによ
り、脳は活性化される。認知症予防5か条は、健康・長寿の5か条でもあるといえ
るだろう。

4.家族が認知症になったら
(1)早めに受診する。
(2)家族が介護をするときは、①孤立させない ②目的を持たせてヤル気を起こさせる  ③自尊心を傷つけない
(3)家族だけで抱え込まず、時には地域連携支援システムなどを活用するとよい。