埼玉県健康管理士会 会員 長谷部 美紀代

5月16日川口市中央ふれあい館の「若返り健康講座」で講演しました。

1.腸の仕組みと働きについて
 口に入れた食べ物が歯によって噛み砕かれ、唾液と混ぜ合わされることから始まる食べ物の消化ルートについて説明しました。
よく噛むことは唾液の分泌を促し、脳を活性化することなど噛むことの効用を話しました。噛み砕かれたものは胃に送られます。強酸性(PH1~1.5)の胃液と胃の筋肉の蠕動運動によってどろどろの粥状になり、十二指腸に送られ、胆汁と膵液によってより消化吸収されやすくなり小腸に送られます。
小腸では食べ物に含まれていた栄養素のほとんどと、水分の約80%が吸収され、吸収された栄養素は小腸の血管から肝臓に運ばれ、体の各部分に送られます。栄養素を吸収されて残った繊維質や水分などは大腸に送られ、水分を吸収され便となって肛門から排泄されます。小腸の血管の周りには神経系があり、脳の指令を受けないで独立して働いており第二の脳といわれています。脳死の状態になっても腸は働いています。
アメリカの神経生理学者マイケル・D・ガ―ション医学博士により、神経伝達物質の「セロトニン」の多くが腸でつくられていることがわかってきました。セロトニンとは人間の精神に重要な働きをしていて、感情のコントロールに欠かせない神経伝達物質であり、不足するとうつ病、不眠症になることもあります。
 ここで、会場の皆さんに「心はどこにあるのか?」質問してみました。胸にあるという方が多かったです。科学的には心は頭脳全体にあるということを伝え、古代中国では心は心臓、胸部、腹部に宿っているといわれ、西洋では中世までは、心は肝臓、脳、心臓にあるといわれていました。日本では蘭学を学ぶようになった江戸時代に心は脳にあることがわかってきたようです。しかしながら武士の社会では、人間の魂と愛情は腹に宿っていると思われており、「切腹」は武士道を貫く名誉ある自決とされていました。最初に切腹をしたのは源為朝であったといわれています。大腸は盲腸・結腸・直腸に分けられます。小腸で栄養分を吸収された残りカスを大腸に送り、大腸の前半部分で未消化分をバクテリアによって分解し、固形の便を作り出し排泄しています。
2.腸を元気にするためには
 腸内には善玉菌、悪玉菌が100兆個くらい住みついているといわれています。日和見菌は優位になっている方に加勢するので、善玉菌が優位になる腸内環境をつくることが大切です。

そこで、腸に届く前の食事の摂り方が大きく影響してきます。①ゆっくりよく噛む。②腹八分目③規則正しく一日三食④刺激の少ない食べ物を選ぶ。⑤胃に長くとどまる食べ物を避ける。⑥食品の組み合わせを考える。⑦胃にやさしい献立をとり入れる。腹八分目では、貝原益軒の養生訓の巻第3 飲食 上を聴いていただき、300年前に小食の大切さを推奨していた儒学者がいたことを紹介しました。ここで、「腹」にまつわる言い習わしを会場の皆さんに問いかけました。「腹が決まる」「腹黒い」「腹に一物」「腹の探り合い」「腹の虫がおさまらない」などいろいろ出ました。やはり「心」は、腹にあるということから出てきたものではないでしょうか。