講演者 田村欣也

9月20日に中央ふれあい館で行った講演と基本的には同じ内容です。群馬県中之条町の高齢者を15年間追跡調査してまとめた「健康寿命の10カ条」が話の柱で、中心は「足腰が丈夫なこと」です。
中之条町で元気で長生きの人は足腰が丈夫でした。家の中での歩きも含め1日平均8000歩で、その内20分はやや速歩きというのがポイント。そして転ばない事が非常に大切です。そこである作家の随筆の一節をお借りしました。“夜中に用を足したくなって暗い中をトイレに向う時などふと考える。人は二本足で立って歩くから転ぶのではないか-。そもそもこれだけ細長い形の生き物が縦の姿勢で進もうとすること自体に無理があるのではないだろうか―と”。

 文章を紹介して転ばない歩き方を説明。転ぶ場所は7割が家の中なので十分気をつけて下さいと具体的な例を示しました。
「健康寿命の10カ条」では他に「アルブミン値が高い人や太り方は中くらいの人が元気で長生き」でした。そこで、低栄養にならないようにくれぐれも気をつけて下さいと注意を促し、BMI(体格指数)の計算方法を示しました。最近では70歳以上はBMIは21・5(従来年齢に関係なく18・5~22~25が標準で、18・5未満は痩せ。25以上は肥満)を下回らない方が良いと“痩せの基準“を上げている傾向にあることを紹介し、特に女性はあまり痩せないように気をつけて下さい申し上げました。
血清コレステロール値と血圧については「高からず、低からず」という事でした。コレステロールの摂取目標を厚労省が外したことや高血圧の人の降圧目標について日本高血圧学会では75歳以上の人は収縮期の血圧を150未満に下げるようにと指導していることを紹介しました。そして誤解を受けないように「両方とも決して標準より高くて良いと言っているのではなく、特に持病のある人はきちんとこれより低い目標を守って下さい」と繰り返し説明しました。

 中之条研究では「主観的健康感が良い人」―多少悪い所があっても自分は健康な方であると思える人―が健康で長生きをしています。これに関連して「一病息災」という言葉を挙げて申し上げました。「大事なことは体調がおかしかったり、検査の数値が気になったら“潔く”医師に診てもらう事です。それが本当の一病息災です。私はこの夏、昔患った心筋梗塞が“再発”しました。数日前から速く歩けなくなるなど兆候はあったのですが、“年のせい”などと勝手に解釈して病院へ行くのをためらっていたのですが、大事に至る前に病院へ行って“間に合い”ました」と自分の体験を話しました。
 その他中之条研究の健康寿命の10カ条には出てきませんが、元気で長生きをするためには「良い睡眠」と「噛む力」が大切であることを強調して講演を終わりました。