埼玉県健康管理士会 会員 小林 英二

10月5日(水)に、高齢者が最もなりたくない病気の一つである認知症に関する講演(75分)を行った。以下、主な内容を報告する。

1.認知症とはどういう病気か。かつては「痴呆」という名称であったが、侮蔑的な意味が含まれているということでH16年に「認知症」と名称が改められた。認知症という病気は、認知機能(記憶力や判断力)が低下することにより、日常生活に支障をきたすようになる状態をいう。初期の症状としては「もの忘れ」が表れることが多いが、加齢によるもの忘れは一時的に思い出せない状態であり、認知症によるもの忘れは何かを体験したことが頭に入っていないので思い出すことはない。

2.認知症の主な種類とその症状。 認知症は高齢者に多く、85歳以上では4人に1人以上に及ぶ。主な種類は、

  1. アルツハイマー病(全体の約5割)原因は、脳の神経細胞にβアミロイドというたんぱく質が蓄積して脳神経細胞が死滅して脳が萎縮することによって起こる。記憶障害が顕著に表れるのが特徴である。
  2. 脳血管認知症(全体の約2割)脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)することで、脳の一部が障害されて起こる。特に高齢者では、脳の細い血管が多数詰まる「無症候性脳梗塞」による場合が多い。
  3. レビー小体認知症(全体の約2割)日本のお医者さんが数年前に発見した認知症で、「幻視」が表れるのが特徴である。

3.認知症予防7か条

  1. 生活習慣病の予防と早期発見・治療。特に、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満などは、動脈硬化を起こし脳卒中のリスクを高めるので、適度な運動とバランスの良い食生活を送ることが必要である。また、早期発見・治療も大切。
  2. 適度な運動を行い、足腰を鍛える。生活習慣病の予防にも効果があるが、有酸素運動を行うと脳の血液の循環が良くなることにより脳が活性化される。また、下半身の筋肉トレーニングは、膝などの関節を守り引きこもりを防ぐことで間接的に認知症の予防効果がある。
  3. 深酒とタバコはやめる。アルコールは脳細胞の死を早めるし、タバコは含まれる有害物質によって血管が障害を受けて脳卒中になるリスクが高くなる。
  4. 転倒に気をつけ、脳の打撲を防ぐ。アルツハイマー病の危険因子として第一に挙げられるのは頭部の打撲である。
  5. 趣味を持って、充実した日々を過ごす。趣味を持つことで、生きがいを得るとともに脳が活性化される。
  6. 読み、書き、計算で脳を活性化。簡単な計算、音読、日記などを書くことにより、脳を活性化することができる。
  7. 社会と関り人との交流を持ち、明るく楽しく過ごす。ボランティアなどで社会と関ったり趣味などを通して人との交流をもつことにより、脳は活性化される。

4.家族が認知症になったら

  • 早めに受診する。
  • 家族が介護をするときは、①孤立させない。②目的を持たせてヤル気を起こさせる。③自尊心を傷つけない。
  • 家族だけで抱え込まず、時には支援団体などに相談をするとよい。